世界遺産・毛越寺 ~浄土を表す建築・庭園~
あの大震災と同じ年、同じ東北にて世界遺産に登録された平泉。
今回は東北の世界遺産を巡行する旅に出向いてみよう。
向かった先は毛越寺。
天台宗の寺院でもあり、同じ平泉のスポットとして有名な中尊寺と同年の850年に円仁(慈覚大師)が創建した。
奥州藤原氏がこの地にて繁栄していた頃は、中尊寺をしのぐほどの規模と華麗さがあったそうだが、奥州藤原氏の滅亡後、度重なる災害等で寺院を含めた建物がすべて焼失してしまった。
しかし、境内にある「大泉が池」を中心とする浄土庭園がほぼ完全な状態で保存されているため、国の特別史跡と特別名勝の指定を2つとも受けている。
まずは再建された本堂にてお参りをして、当時から存在する浄土庭園に向かおう。
ご覧の通り、平安時代から時が止まっているような雰囲気である。
確かに、ここに当時からの建物があれば、平安時代の雰囲気を味わうことができるであろう。
もし平泉がそのまま繁栄していたら、『今の日本はどうなっているのであろうか・・・。』そんな事を想像しながら境内を散策すると、なんとも感慨深いものである。
散策していると、あるスポットに遭遇した。
ここは、「築山」というスポットらしく、水際から山頂近くまで大小各種の石を立てて岩山の姿を造り出しているとのこと。
ガイドによると、深い淵に臨む断崖の景観を思わせ、『作庭記』に記されている「枯山水の様」の実例ということらしい・・・・。
うーん。恥ずかしながら、知識不足を実感してしまった場所でもあった。
何とも奥深いスポットである。
そんなこんなで、足を進めていると次なるスポットに到着した。
「遣水」という池に水を引き入れるために造られた場所である。
ガイドによると「作庭記」に記述されている四神相応・吉相の順流であり、曲がりくねる水路の流れに、水切り、水越し、水分けなどの石組が配されているとのこと。
訪れた時は、まだ緑が芽吹く前であるため、なかなか想像しにくいだろうが、平安時代にはこの場にて雅な時間を作り出していたのである。
そして「洲浜」という先ほどの「築山」と対照的に造られた入り江は、砂洲と入り江が柔らかい曲線を描き、美しい曲線美を表現している。
ちなみに、この場所は他に比べて池底を浅くして玉石を敷き詰めているため、水位の昇降に応じて現れるゆったりした入り江の姿を眺めることができると案内をいただいた。
このように、毛越寺のスポットは京都や奈良のように当時からの建築物が存在しないため、当時の面影を直に垣間見ることは難しいであろう。
しかしながら、この浄土庭園が存在することで、当時の面影を想像しながら巡ることができる。
想像力を働かせ、古の時の生活に思いを馳せてみてはいかがだろうか?
存在するものが全てではない…。
そんな想いで是非とも足を運んでいただきたい場所である。
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